日本のナイトライフシーンを牽引する齋藤弁護士の夜の過ごし方を聞いた
2019-06-25

日本のナイトライフシーンを牽引する齋藤弁護士の夜の過ごし方を聞いた

Culture

海外でも話題となった日本の風営法改正。その中心的役割を果たし、最近は初の著書『ルールメイキング ナイトタイムエコノミーで実践した社会を変える方法論』を発表するなど、アクティブに活動している弁護士の齋藤貴弘さん。日本の夜の価値観を変革するために、日夜奔走している斎藤さんが、普段東京でどんな遊び方をし、どんなことを考えているのか、そのナイトライフについて語ってもらった。

  • ―齋藤さんはDJをやるなど音楽やカルチャーに造詣が深いですが、好きになったきっかけは?

    Takahiro Saito 中学生のときにギターを始めて、最初は同級生とバンドをやっていたんです。高校生のときもずっとバンドをやっていて、卒業後も進学、就職をせずにアルバイトをやりながらバンド活動を続けていました。当時はバンド一本でやっていこうと思っていたんです。ハードコアパンクみたいなバンドをやっていたんですよ。


    ―そんな過去があったなんて(笑)。でもなぜバンドマンから弁護士になろうと思ったのですか?

    Takahiro Saito バンドに憧れてやっていたけど、現実はすごく大変で。当時、奄美大島出身の人たちと一緒にバンドをやっていたんですけど、すごく個性的な人たちだったんです。後にメンバーはボアダムスに入ったり、山塚アイさんと“1(ワン)”というバンドを結成したりしました。別のメンバーはCradleというユニットでNujabesあたりと一緒に当時のJazzy HipHopシーンで活躍したり、一緒にやっていたメンバーが、すごいミュージシャンになっていって。でも僕はそんなに才能があるわけでもなく、なんか中途半端な感じだったんです。まったく真逆のことをやりたいなと考えるようになり、それでバンドをやめて司法試験を受けようと思ったんです。

  • ―本当に真逆に振れましたね。でも弁護士になったんだからすごいですよ。そして弁護士として風営法の改正に尽力するなど、中心的な役割を果たしました。なぜダンスや音楽関係の法律問題に関わることになったのでしょうか?

    Takahiro Saito 音楽関係の法律って著作権関係が多いんですね。特にデジタル流通の中で著作権をどうするかというのが一つテーマになっていて。CDが売れなくなって、聴くから体験するというライブシフトがある中で、著作権法だけではなくて、リアルな場所を規定する法律が重要なんじゃないかなと。自分のまわりにバンドやDJをやっている人がたくさんいたので。クラブの摘発のニュースが入ってきたときは直感的にそんなことを考え、僕にも手伝えることがあるんじゃないかなと。きっかけはそんな感じです。


    ―職業柄、会食や飲みの機会なども多いと思いますが、現在のナイトライフはどんな遊び方をしているんですか?

    Takahiro Saito 最近は音楽が面白いバーばかりに行っていますね。程よい広さで落ち着いて話ができて、音響がすごくいい。お店の個性がすごく出ている。「Deus Ex Machina Harajuku」も個性が強い店ですよね。開放的で、いろいろな人を受け入れてくれる感じ、なんかある種のクラブ的な感じがしていいなと。DJ KENSEIさんがDJをやったりしている「INC Cocktails」という最近オープンした店もそうですし。あと神宮前の「Le Sang des Poetes」、ゴールデン街の「bar NIGHTINGALE」などは大好きな場所です。

  • ―DJはどんなときにやっているのですか?

    Takahiro Saito 元々、受験生のときにインターネットラジオをよく聴いていたんですけど、それがLA発の「dublab」というラジオだったんですね。デイデラスなどが立ち上げメンバーで、フライング・ロータスなどもコミュニティにいたりして。その日本ブランチをやらないか、という話がまわりであって、イベントを音楽ライターの原雅明さんなどとやっていたんです。クラブでイベントをやるのではなく、カフェやホテル、レストランなどの空間にDJを入れてやる、そういうコンセプトのポップアップなラジオ局なんです。クラブ以外でもDJや音楽って、いろいろな価値を持ち得るんじゃないか、というのは昔から思っていたんですよ。

    ―「dublab」のイベントはどのくらいのペースで開催を?

    Takahiro Saito 「Deus Ex Machina Harajuku」や「INC Cocktails」などでは不定期でやっているんですけど、神宮前にある「TRUNK HOTEL」、新丸ビル内にある「丸の内ハウス」等では定期的に開催しています。この間は東京の大塚にある「星野リゾート OMO」でやりましたね。

    ―今まで東京のナイトカルチャーを見てきて、その独自性はなんだとお考えですか?

    Takahiro Saito 東京には大きなお金が入った超メジャーな大バコが少ないのが特徴だなと思っていて。基本的にはあまりお金をかけずに、オーナーの個性でやっている小バコが多い。そのスーパーニッチな小バコの集合体が、東京のクラブシーンを形成しているのかなと。それがすごく面白いなと思います。

    ―そういった小バコならではの面白さをどういったところに感じていますか?

    Takahiro Saito お店それぞれに独自性があり、個性的で面白い。個性的ということはそこで遊んでいる人たちもユニークで、濃いコミュニティができる。最初は入りづらいかもしれないけど、入ってしまったらオープンマインドでみんなすぐに打ち解けられる。そういったお店は音にもちゃんとこだわっているし、ちゃんと音楽と向き合っている感じがいいんです。

  • ―日本にもナイトタイムエコノミーの取り組みが徐々に浸透してきていますが、海外と比べるとどういったところが違うのでしょうか?

    Takahiro Saito つい先日、来日していたアムステルダムの関係者や大使館の人、若いクリエイターたちと飲む機会があったんです。みんな音楽が好きでクラブによく行くらしいんですけど、インスピレーションを受けにいくんだ、というような趣旨のことを口を揃えて言っていて。いろいろな人がいて、それぞれの価値観がぶつかり合う。そういったものに刺激を受けて持ち帰る、というのがクラブの価値だと。ベルリンのクラブコミッションのLutz Leichsenringさんとか以前から言っていたんですけど、クラブの価値は、クラブ内に閉じられた形であるのではなく、外に刺激を与えて、いろいろなクリエイティブ産業を起たせていく点にあるという。フィルムやファッション、アート、飲食、ITなどの業界に、刺激を与える装置としての価値をいかに高めていくか、ということを言っていて。日本だとクラブに対しての存在価値みたいなものがあまり認識されていない。日本でもクラブに行くことの面白さとはなんだろう、というところがもう少し言語化されたり、共通の認識になっていけばいいなと思います。

    ―齋藤さんはバンドマンだったわけで、現場にいたからこそ分かる視点があると思うんです。その独自の立ち位置から日本のナイトタイムをより充実させるために、今後、どのような展開を考えていますか?

    Takahiro Saito 日本のナイトタイムの変革はまだ道半ばなので、引き続きいろいろやっていきたいなと思っています。直近のところだと、アムステルダムとベルリンのナイトメイヤーのチーム、そして日本の観光庁と一緒に、「Creative Footprint」というプロジェクトをやる予定です。夜の文化的な価値をデータや言葉で可視化していくというプロジェクトなんです。ミュージックベニューをリストアップして、その場所がその都市にとってどういったカルチャーインパクトを与えているのか、というのを調査する。日本にも面白いスポットはたくさんあるので、それを客観的な情報としてまとめる。そうすると小バコの面白さなどが、国の事業として客観的になるので、政策に反映していけるかなと考えています。

    Photo:Reiji Yamazaki, Text:Jun Nakazawa

  • 「元々、風営法やナイトタイムエコノミーの本を書かないか、というオファーだったんです。でも風営法の問題だけではなく、世の中のルールにどうアクセスして自分たちで変えていくか。そこにフォーカスして、もう少し広げた視点で書きたいなと思ったんです。弁護士はルールがあることを前提に、それを守りなさい、という仕事なので。でもそもそもルールが現在の時代に追いついていない、というのは風営法だけの問題ではない。そういったことをもう少し他の文化や産業に応用できないかなと思ったんです。ナイトタイムエコノミーにこれから関わる人には読んでほしいですね。いろいろな人が尽力して風営法改正が実現したので。新しい風営法のなかで新しくビジネスを始める人がこれからどんどん出てきてほしいのですが、多くの人たちの努力で実現した風営法改正のプロセスを知ってもらい、面白い夜のシーンを作っていってほしいなと思います」

  • Deus Ex Machina HARAJUKU
    address:3-29-5 Jingumae, Shibuyaku, Tokyo JAPAN
    tel:81(0)-3-5413-3949
    http://deuscustoms.com/flagships/residence-of-impermenance/

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