「音楽のレーベルをやることと、クラフトビールを作ることは似ている」。約13年ぶりとなる待望の新作『Möbius Strip』をリリースした、KEN ISHIIが推薦するクラフトビールが飲める店
2020-01-07

「音楽のレーベルをやることと、クラフトビールを作ることは似ている」。約13年ぶりとなる待望の新作『Möbius Strip』をリリースした、KEN ISHIIが推薦するクラフトビールが飲める店

Music

1993年にベルギー発のテクノ・レコードレーベル「R&S RECORDS」よりデビューを果たし、以来、”東洋のテクノ・ゴッド”と言われ続けてきたテクノDJ/サウンドプロデューサーのKEN ISHII。90年代半ばから現在に至るまで、勢い止まることなくワールドワイドに活躍。現在の世界のダンスミュージックシーンに影響を与え続けている。そのKENI ISHIIが、来たる11月27日にニューアルバム『Möbius Strip(メビウス・ストリップ)』をリリース。「音楽制作が大好きだ」という彼が、渾身を込めて作り続けたきたトラックは、どれも素晴らしい輝きを放っている。
さて、今回はそのKEN ISHIIの新作の話を聞くとともに、デビュー時からKEN ISHIIがこよなく愛するクラフトビールについての話を聞いてみよう。なんとクラフトビール好きが高じて、ついにセルフプロデュースのビール「KIKK IPA 2019」を作ってしまったとのことで、KENさんおすすめのクラフトビールが飲める店も紹介するので、是非足を運んでみて欲しい。

  • —新作『Möbius Trip』ですが、93年にデビューしたときから、現在までの、KEN ISHIIさんの音楽の歴史を感じるアルバムでした。約13年ぶりとなるアルバムですが、どのような中で制作されていったんですか。

    KEN ISHII もともと曲を作るのは趣味で、いつも作ってはいたんですよ。だけど前作からかなり時間も経っているので、どんなものを作ったらいいのか考えてはいました。シングルをいろいろな国のレーベルからリリースしてたけど、テクノのトレンドの中で、DJ向けのダンストラックを作っていることが多かったんで。アルバムに関しては「俺はこれなんだ」というものを見せることができたらいいなと。最終的に狙いとかなく、本当に好きな曲を作った感じです。

    ―アイデアが浮かんだらどんどん作っていった感じですか?

    KEN ISHII そうですね。深夜に家族が寝静まったあとに、今日はやるかっていって作ることもありますし、音楽のスタイルとしてはトレンドを意識していないんですが、常に新しいソフトウエアやプラグインなんかを、趣味的にも常にチェックしているので、それを試してやっていくうちに、「面白い音ができた」とか「いいフレーズができた」とか。技術的なアップデートを常にしている中で、制作していった感じです。

    ―好きな音は、昔から変わらないなと思いますか?

    KEN ISHII 結局そうなったなと思います。人によっては「この音は自分のトレードマークだから」と言って使い倒す人もいるけれど、自分にはあまりそれがなくて。昔と違って音の種類に関しては、ひとつシンセサイザーを買えば膨大に入っているから、それを一通り聴くんですけど、結局好きな音って決まってるんですよね。細かいことを言うと、自分は少し生きた音が好きというか。単音がひとつずっと鳴っていというよりは、トーンの中で変化があったりだとか、プログラムの中で見えない感じで音が跳ねたりとか、ある種読めない感じ。そういうタイプの音が好きですね。

  • ―90年代から活動しているテクノ系のトラックメイカーの人たちが、その感じを打ち出すのがうまい感じがします。

    KEN ISHII 当時テクノは新しい音楽で、まだジャンルとして行き着いていない部分があって、アーティストによるところがすごく多かった。僕がちょうど出てきたときは、インテリジェント・テクノとか、IDM(インテリジェンド・デジタル・ミュージック)とか言われていていたんですよ。ダンスに特化するよりは、聴いて楽しむみたいな。あれから20年以上経って、人々がテクノに求めるものが広がってきた。削ぎ落とされて、お客さんがテクノに求めるものが、最大公約数的に残ったのではないかなと。自分も現場にいるのでわかっていることは、世界共通で踊りやすいということですよね。でも、自分が作りたいものは必ずしもそうではないし、自分が本来持っているいろいろな要素を一曲に入れ込みたいと思っているんです。

    ―自然に自分から出てくるものを音にしているって感じですね。

    KEN ISHII 狙っていないというか。それはすごくあります。

    ―Jeff Mills、Dosem、Go Hiyamaとのコラボレーションの曲も魅力的でした。

    KEN ISHII コラボレーションにすると、やっぱり自分が持っていないものになっていくんですよ。Jeff Millsに関しては、完全にジャンルの違う人とコラボレーションをすることはあっても、テクノ・アーティスト同士でコラボレーションすることは少ない。なので、引っ張りだせたことが嬉しいですね。

    ―アルバムを、今リリースした理由はとくにありますか?

    KEN ISHII 考えていたというよりは、機が熟したというか。あと、出すからには、出す環境をしっかりしたかった。今、ダンスミュージックをアルバム単位でプッシュしているところもあまりないし、いろいろなレーベルからシングルを出すのがスタンダードになってきているので、アーティストもアルバムをしっかり出そうというスピリットがなってきている。だから自分としてはアルバムを出す以上は、「これは自分だ」と言えるものを出したかったし、出すからには、ただ音を出すだけでなく、いろんなインパクトの強いものにしたかった。ある意味昔ながらのアルバムを作り上げていって、プロモーション的にも外から肉付けしていってと。だから時間がかかってしまいました。

  • ―テクノで、この形をやるのはいいですよね。

    KEN ISHII 最近は一曲買いとかで、命が短いじゃないですか。一カ月経ったら、熱気がなくなっちゃうとか、でもアーティストは本来、もう少し長く聴いて欲しいから作っていると思うし。だからこうやってアルバムとして出したら、タイムレスで聴いてもらえるかなとも思うし。最近は即戦力で作っているものが多いですからね。それはそれでいいんですけど、もしもタイムレスな作品を作りたいたいなら、こういう形でアルバムを作ったらいいんじゃないないのかなって。

    ―アルバム単位での政策や、PVを政策をして視覚的にも表現するなど、今回のようなスタイルのリリースは、今の音楽シーンに何か印象つけるものがあるのかなと思います。

    KEN ISHII 長くやっていて、そういう時代を経験しているからこそ、できたのかもしれないし。でも労力もかかるし、お金もかかる。だけど、それだけ大きくやることで、インパクトをつけることもできるし、曲だけ作って、顔もキャラクターもわからないというよりは、どういう人間が、どういう思いでこれを作ったのかとかは、やっぱり伝えていかないといけないものなのかなと。そういう意味では、少しでもそのきっかけになるといいかなとか。

    ―「Möbius(メビウス)」とタイトルにつけた理由はなんですか。

    KEN ISHII メビウスの輪、メビウスの帯とか言いますけど。こうやってまとめて作ってみて思ったことが、やっぱり自分は音楽が好きなんだなってことで。なんか、終わりがない。あとは本当に、毎年新しいものが出てきて、常にアップデートされている。音質もそうだけど、そんなに変わっていないと思いきや、細かい部分で変わっていたり。常にそれをチェックしながら追いかけていくのもすごく面白いんですよ。「知った振りしていたけど、知らないのもあるんだな」って。細かいフリークエンシーとか、周波数とか、未だにそういうのがあったりとかするので、常にネットで調べて頑張っていますからね。

    ―もう永遠にいけますね。

    KEN ISHII ぜんぜん違ったりしますから。全然飽きないし、好きですね。だから本当に裏も表もなく、ずっと続いていくのかなって。この気持ちで。

    ―このアルバムをどう聞いてもらいたいなと思いますか?

    KEN ISHII DJ向けのトラックではないですけど、自分の中のテクノやエレクトロニック・ミュージックでできる表現はやりきった感があるので、是非聴いてもらえたらうれしいです。あとは手に取ってもらえるのであれば、パッケージとか、ある意味音楽を作る以上にその部分も時間をかけているので、是非アルバムを手に取って欲しいなと思います。このアルバムを完成させて、気分はとっても晴れやかですね。

    ―さて、その晴れやかな気分にさせてくれる、KENさんお気に入りのお酒とは……(笑)

    KEN ISHII ビールですね。気分は、さらに晴れやかになりますね(笑)。

  • ―ビール好きはいつから始まったんですか?

    KEN ISHII 実をいうと、大学生の頃とかは飲めなかったんですよ。飲み会が苦手だったんですけど、音楽をやるようになって、初めてリリースをしたレコードレーベルがベルギーだったことから、そのときにベルギーに行って、そこでホワイトビールを飲んで「ビールって、こんなに美味しいの!」って。

    ―デビューしたときと同じ頃から、ビール好きが始まっているんですね(笑)

    KEN ISHII ベルギーって、世界からブリューワーリーの人たちが集まるんですけど、やっぱり美味しいんですよ。それこそ90年代は、ベルギービールの本を出そうかって話もあったくらいなんですけど、しばらく経って、アメリカを中心に世界中に広がって、いろいろなクラフトビールが世界各国で飲めるようになって。DJでいろいろなところへ行くので、少しつづ飲んでいくうちに、I.P.A.(インディア・ペール・エール)自分の好きなスタイルに巡りあったんです。クラフトビールには本当にいろいろな種類があるんですけど、I.P.A.はホップに一番注目していて、特徴とか種類もいろいろあるんです。それを配合して、ダブルI.P.A.、トリプルI.P.A.、ブルートI.P.A.とか、さらにいろいろな種類に分かれるんですけど……音楽でいえば、いろいろなジャンルがあるのに似ていますね。

    ―テクノの中でも、ミニマルテクノとか、ジャーマンテクノとかあるようにですね。そして、ついにKEN ISHIIプロデュースでI.P.A.を作ってしまったのですね(笑)。

    KEN ISHII 「こういうのが飲んでみたいな」と思っていたら、たまたま僕の話に乗ってくれたブリューワリーさんがいたんです。「RISE & WIN BREWING Co.」 という徳島の上勝町にあるブリューワリーなんですけど、そこへ行って、見学をして交流をして、自分のパッションを伝えたんです。そしたら一緒にやりましょうと。
    ホップの種類から、ブレンドの種類まで、こちらからすべて伝えて作ってもらいました。ビールの名前は「KIKK IPA 2019(キック・アイピーエー 2019) 」と言います。その完成発表会を12月8日に、銀座の「PLUS TOKYO」で行うことになりました。

    ―本格的ですね。場合によってはそこから広がっていく可能性もありますね

    KEN ISHII そうなるといいですね。もうこれは、夢の実現ですね(笑)。クラフトビールって、イースト(酵母)が入っているから、出来上がるまでどうなるかが読めなくて面白いんですよ。自分も個人的にそれまでに何度か作ってみましたけど、当たらないことが多くて。温度とかも影響してきたりするので、最後の最後で「あれ?」っていうこともあるし、失敗もありますけど、それがすごく面白い。プロのところでやるとしっかりできるんですけどね。

    ―ビールは生き物のようですね。まるで音楽に通じるものがあるような感じがします。作り手によっても、使う機材や、その環境によっても違うものが生まれてくるように。

    KEN ISHII そうなんですよ。大抵みんな、これと同じようにと思ってスタートするんですけど、なんでこうなっちゃったんだろうって。それは本当に音楽と同じですね(笑)。

  • ―KIKK IPAは、ご自身の中でOKということですね。

    KEN ISHII もちろんです。今回は、妥協ゼロですから。ビールを作る上で、使用するホップとかによってコストの違いとかも出てくるんですが、「RISE & WIN BREWING Co.」は、僕のリクエストを受け入れてくれたんです。それは本当に嬉しかったですね。あとはデザインもそうなんですけど、ボトルのラベルも世の中にないものにしたくて考えました。味はトロピカルですっきりしていて、少し苦味があって、他にはないスパイシー感がある感じですね。

    ―KEN ISHIIは、音楽制作もビール作りも妥協しないですね。

    KEN ISHII ニューヨークへ行っていたときも、飛行機に乗っていたら風邪を引いてしまって39度くらい熱がでたことがあったんですけど、それでも風邪薬を飲みまくって、DJを終えた後ビール屋を探して、フラフラになりながら店へ行って、20本くらい買って持ち帰りましたからね。なんかクラフトビールを作ることは、音楽を作ったり、レーベルをやることと近いなと前々から思っていて。自分のテイストでいかようにもなるというか。既存のやり方ではなく、自分のやり方でぜんぜん良くて、さらにラベルとかまで考えられるので。レコードレーベルのロゴがそれぞれ違うのと一緒で、ラベルのデザインが違う。レーベルのロゴを見て、ジャケ買いみたいにクラフトビールを買うみたいな感覚も近いかもしれません。

  • ▷KEN ISHIIが推薦するクラフトビールが飲める店

  • 1. Goodbeer faucets SHIBUYA TOKYO
    Adress:Shoto, Shibuya-ku, Tokyo 1-29-1 CROSSROAD 2F
    Tel:+81(0)3-3700-5544
    OPEN HOURS:Mon~Thur 16:00~24:00, Fri 15:00~25:00, Sat 15:00~24:00, Sun in case of weekend national holiday, Sun 15:00~23:00
    https://shibuya.goodbeerfaucets.jp

    渋谷にあり、国内外の約40種類のドラフトビールが生で楽しめるビアバー。「少し時間ができたり、約束事の合間に一杯飲んだりしています。この店がいいのはメニューが常に変わっていて、日本、アメリカ、ヨーロッパと、様々なスタイルの国のビールが、ドラフトで飲めること。I.P.A.もそうですけど、クラフトビールは鮮度がすごく重要で、時間が経つと香りや味が落ちていくので。なので、クラフトビールはできる限りタップで飲むのがいいんです」。

  • 2. Anntena America Kannnai Store
    Adress:#6Yoshida Bld 5F, 5-4 Yoshidamachi Naka-ku, Yokohama JAPAN
    Tel:+81(0)45-315-5228
    OPEN:Mon, Tue CLOSED, Wed~Fri 15:00~23:00, Sat 11:00~23:00, Sun/Holiday 11:00~22:00
    https://www.antenna-america.com/content/store-introduction-kannai/

    アメリカを感じるシンプルなフードメニューとビールのコンビネーションを楽しめる、横浜のボトルショップ&テイスティングルーム。。テイスティングもでき、大画面スクリーンでスポーツ観戦も可能な上、家族連れもOK。「アメリカのブリューワリーのものをしっかり揃えていて、品揃えがすごいのと、そのセレクションと膨大なストックが素晴らしい。店は関内の雑居ビルの5階にあって、D.I.Yな雰囲気でいい感じです。行くいつも混んでいて、ビールが好きで1人できている人もいるんですよ」

  • 3. BEER CELLAR SAPPORO
    Adress:AMS Building 1F, 322-1, South 1 WEST 12, Chuo-ku,Sapporo, Hokkaido, 060-0061 JAPAN
    Tel:+81(0)11-211-8564
    OPEN:Wed&Thus 15:00~21:00, Fri 15:00~23:00, Sat 12:00~23:00, Sun/Holiday 11:00~21:00
    http://beer-cellar-sapporo.com

    「僕は札幌出身なんですけど、実家に帰るときは必ず寄ります。品揃えがよく、クラフトビールの産地でもあるポーランドのビールがあって、飾らないビールバーという感じが良いです」。札幌の姉妹都市であり、クラフトボールの聖地であるポートランド。こちらではオレゴン州をはじめ、さまざまなブルワーたちのクラフトビールがタップとボトル&カンで飲める。

  • 4. RISE & WIN BREWING Co. BBQ&GENERAL STORE
    Adress:237-2 Hirama, Masaki, Makkatsu-cho, Katsura-Gun, Tokushima JAPAN
    Tel:+81(0)885–45-0688
    OPEN:Wed~Fri 11:00~17:00, Sat&Sun&Holiday 10:00~18:00, Mon&Tus CLOSED
    https://www.kamikatz.jp/ja/toppage.html

    RISE & WIN BREWING Co. KAMIKATZ TAP ROOM
    Adress:Workers & Co 1F, 1-4-2 Higashi-Azabu, Minato-Ku, Tokyo JAPAN
    Tel:+81(0)3-6411-3800
    OPEN:Mon~Fri 12:00~15:00, / 18:00~23:00, Sat 12:00~15:00, / 18:00~23:00 Sun&Holiday CLOSED
    https://www.kamikatz.jp/ja/taproom.html

    KEN ISHIIプロデュースのクラフトビール「KIKK I.P.A.」を作った徳島・上勝町のブリュワリーがこちら。その隣にある店が、なんとも雰囲気がよくお気に入りなんだそうだ。「上勝町は、町がゼロウェイスト宣言をしていて、世界中からも視察がくるほどリサイクル率が高い町でも知られています。店も廃材などを再利用して作られているんですけど、雰囲気がすごくいいんですよ。徳島空港から車で一時間弱かかりますが、是非足を伸ばして行ってもらいたいですね」。ちなみに、東京にはKAMIKATZタップルームというブリュワリー直営のビアレストランがあるので、そちらも是非。



    ▷アルバム

  • KEN ISHII
    『Möbius Strip』
    Out on sale
    http://www.umaa.net/KI/


    ▷店

  • PLUSTOKYO
    Address:12F/RF 1-8-19 Ginza, Chuo-Ku, Tokyo JAPAN
    Tel:+81(0)3-3563-3776
    https://plustyo.com/about/?lang=en

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