TREKKIE TRAX: The beginning after burnout
2020-01-26

TREKKIE TRAX: The beginning after burnout

Music

日本の音楽シーンを指し、“ガラパゴス”と表現されることはもはや定石である。良くも悪くも、この国では様々なカルチャーが独自の発展を遂げた。アニメにゲーム、ポップミュージック…。クラブシーンも例外ではなく、多くのプロデューサー / DJが試行錯誤中だ。2012年に発足したネットレーベル「TREKKIE TRAX」もそのひとつ。EDMが世界中を席巻する中、ゲーム音楽やジャパニーズ・テクノからインスピレーションを受けた若いクリエイター集団が現れた。CarpainterにMasayoshi Iimori、Fellsius…。多くの若手が同レーベルに所属しているが、他のアジア諸国と比較してもその作家性は異質だ。設立から7年が経過した今でも、彼らは葛藤しながら規模を拡大している。Diploの「Mad Decent」、DJ Snakeの「Premiere Classe」から音源のリリースを重ね、順風満帆に見えるTREKKIE TRAXの面々。7周年パーティの模様と共に、その足跡を辿る。

  • 東京最大規模のクラブイベント 、ageHa。最大キャパシティは約2400人だ。新木場の駅を出て、ひたすらまっすぐ道なりに進むとそこへ着く。夏の終わり、ベースミュージックをフィーチャーしたパーティ「WORLD CLASS」と抱き合わせで、TREKKIE TRAXのレーベル設立7周年を祝うイベントが開催された。この日は海外からのゲストDJとしてSan Holoが登場し、ギターとCDJを使ったハイブリッド・セットを展開した。「ボタンプッシャー」や「Fake DJ」などの揶揄や批判に揉まれながら、かつて“EDM”と呼ばれた音楽は日進月歩で進化を続けている。満員のageHaのフロアでパフォーマンスを披露したSan Holoに、ダンスミュージックの現在地を感じた。

  • 他方、TREKKIE TRAXの面々は――。ベースミュージック、ハウス、テクノなどをベースに、それぞれの作家性を最大限に発揮し、レーベルの中でも細分化が始まっている。それぞれ暫定的にカテゴライズするなら、Carpainterがテクノ、Masayoshi Iimoriがベースミュージック、Fellsiusがハウス(もちろん各々例外はある)。この現状に対し、レーベルの共同設立者であるfutatsukiはこう語る。「リリース関してはもう一度地に足をつけるというか、フェスティバル・ミュージック自体が縮小傾向にあるので、今後どういったプランを練っていくかはレーベル内でも今最も時間をかけて話し合っています」。余談だが、今回の7周年パーティは、彼らがこれまで開催したイベントの中で最も規模が大きい。そんな中で、作家性の細分化が起きている状況は、ダンスミュージックシーンの過渡期を示しているようで興味深い。

    Fellsius
  • またfutatsukiは、先述した日本の“ガラパゴス”についても語っている。「日本には日本の歌謡音楽の系譜が数十年間蓄積されており、その文脈は海外の音楽シーンとは今でも切り離されているように思えます。もちろん海外シーンのトレンドを取り込んだり、海外のプロデューサーを招聘して楽曲のプロデュースを行ってもらう事例も増えていますが、やはり国内の音楽市場に向けて音楽を制作する部分には変化がないように感じています」。恐らく、あなたの国と日本の音楽チャートを比べても、その内容は大きく違うだろう。それがオリジナリティやアイデンティティとして機能する場合も大いにあるが、その反対に作用するケースも多く見受けられる。世界のマーケットに標準を合わせた音楽を作っても、国内のセールスが奮わない。そういう事象を、筆者個人もたくさん見てきた。

    同じくTREKKIE TRAXのA&Rを務めるseimeiともageHaで会えたが、彼はこう言っていた。「少し前までは海外のマーケットだけ考えて、自分たちの好きなように音楽をやれればいいかって思ってたんですけど、場数を踏むうちに国内でも規模を拡大出来るのではと考え直してる部分はあります。レーベルとして新しいフェーズに入ったというか」。7年も続けていると、新たに見えてくることもある。

    Masayoshi Iimori
  • 「実は2年前、運営陣がバーンアウトしているんです」。futatsukiがそう切り出した。「特定のジャンルの音楽をリリースするレーベルではないので、次にどういった音楽をリリースするか、どういったパーティーを行っていくかなどが見えなくなりました。そこから回復するまで約1年程度かかりましたね。これまで一緒にクラブで遊んで来た友達も、就職などを機にクラブシーンから離れていくことが多くて…」。これも日本独特のカルチャーなのかもしれない。あなたの国ではどうだろうか。大学を卒業した途端に、クラブから離れてしまう人はいるだろうか。ゼロではないだろうけれど、この国ほど多くはないだろう。これも、筆者の個人的な実感としてある。

    Carpainter
  • 「初心に帰ってる部分はありますね。seimeiも言うように、新しいフェーズに入った感覚があります。7年続けてきて、サイクルが1周した気がするんです。TREKKIE TRAXとして自分たちが自信を持って『好きだ』といえる音楽をまたリリースしていくフェーズなのかな、と。実際にファンベースの構築はゼロから進めているところですよ」。futatsukiが続ける。混沌とする日本の音楽シーンだが、彼らならば軽やかに乗りこなし、新たなフロンティアを切り開いてくれるはずだ。バーンアウトからの、再出発。


    <Information>
    TREKKIE TRAX
    http://www.trekkie-trax.com/

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